ペプチドと骨形成因子を組み合わせた薬剤で顎の骨を増やすことに成功-東京医歯大
東京医科歯科大学は3月16日、これまで困難とされてきた口の中への注射により、顎の骨を造成させることに世界で初めて成功したと発表した。
この研究成果は、同大大学院医歯学総合研究科硬組織薬理学分野の青木和広准教授らの研究グループと、京都大学再生医科学研究所、米Cedars-Sinai研究所との共同研究によるもの。国際学術誌「Journal of Dental Research」オンライン版に3月22日付けで掲載されている。顎の骨が少なくないと安定した噛み合わせが得られなくなり、人工歯根も植えられない。また、口蓋裂など生まれつき骨が足りない小児には骨の移植が必要となるため、歯科臨床において、顎の骨を造成する方法が数多く開発されてきたが、未だに手術をせずに骨造成を促進する方法はない。局所の骨を造成する薬として骨形成因子BMP-2(Bone morphogenetic protein-2)があるが、この因子単独で骨が十分作られる用量を使用すると、ヒト口腔内では歯肉が腫脹するなどの副作用を引き起すことが指摘されているため、BMP-2の使用量を抑えて、骨を効率的に誘導できる骨形成促進薬が求められている。研究グループはこれまで、破骨細胞分化因子「RANKL」の作用を阻害する分子量1,400ほどのペプチド「OP3-4」が骨形成を促進する作用を示すことを明らかにしており、薬剤を注射した局所に留めておく目的で既に臨床応用されているゼラチンハイドロゲルを用いた材料開発も理工学系の研究者と共同で行っていた。
臨床応用可能な骨造成方法の開発に期待
今回、同研究グループは、粒子状のゼラチンハイドロゲルを用い、BMP-2とペプチドOP3-4 とを組み合わせた薬剤をマウスの上あごに注射。4週間後、注射した部位には明らかな骨造成が認められ、注射1週間後からすでに、骨形成関連遺伝子の発現が亢進していたという。副作用を考慮し、使用量を抑えたBMP-2のみでは十分な顎の骨は造成されなかったが、少量のBMP-2にペプチドOP3-4を併用すると、骨の量は倍以上に増えることが明らかとなった。同研究成果において非侵襲的な顎骨造成方法が示されたことにより、患者にやさしく骨を増やすことができる技術開発に向けて大きく前進したと言える。現状では手術をする方法以外には骨を増やすことができなかった歯科臨床において、今後多くの臨床現場に応用可能な骨造成方法の開発に期待が寄せられる。
2016年3月25日 医療NEWSより