口のトラブル 予防のカギは
和久田
「『歯と口』をテーマに、赤松アナウンサーとお伝えします。」
赤松
「今日、6月4日から1週間は、『歯と口の健康週間』です。」
阿部
「『虫歯の日』なんていう言い方もありましたけどね。」
赤松
「そうですね。
その虫歯については、かつては高校生以下の子どもの9割に虫歯がありました。
しかし最近は予防が進んで、虫歯のある子どもは減っているんですね。」
和久田
「虫歯が減っているというのは知らなかったですね。」
赤松
「代わって最近注目されているのが、こちら。
このように歯列がガタガタしていたり、上と下の歯がかみ合わなかったりして、歯並びに問題があるケースです。
また、歯周病などにかかる子どもも少なくありません。
こうした子どもたちの口の中のトラブル、実は普段のちょっとした習慣で防ぐことができるんです。」
こどもの歯並び カギは「口の開き」
小学4年生の石川瑠衣士(いしかわ・るいじ)くん。
上の前歯が出てきてしまい、3か月ほど前から歯並びの治療を始めています。
25年で、およそ4,000人の子どもの歯並びを診てきた相田能輝(あいだ・よしてる)さん。
石川君の場合、原因として指摘したのは…。
いつも口が開いていることです。
上唇が上がってしまっていますよね。
上唇は前歯を抑える役割を果たしますが、それができないため、前の歯が斜めに飛び出してしまったのです。
石川瑠衣士くん
「別に大丈夫じゃないかと思っていたけれど、先生に言われてから、友達とか見たらみんな口を閉じていた。」
さらに、口が開いていると舌の位置が変わり、歯並びに影響することもあります。
舌は、上あごにくっついている状態が、正しい位置とされています。
ところが口が開いていると、鼻ではなく口で呼吸する「口呼吸」になってしまいがちです。
空気の通り道を確保するため、舌が、正しい位置から下がってきます。
すると、舌が上の歯を押し出してしまったり、下の歯を押し出してしまったりという影響が出てくるのです。
相田先生は石川君のお母さんに、「食べ方」の問題を指摘しました。
母 春香さん
「かんでいる間にお茶で流し込む。
かむ習慣が本当にない。
気付くと軟らかいものばかり食べていたり、硬いものを『かめない』と言ったり。」
相田さんは、石川くんの口が開いてしまうのは、食事の時によくかんでいないため、口の周りの筋力が弱いのが原因の1つだと見ています。
歯科医 相田能輝さん
「正確に唇を閉じたり、顔の筋肉をつかう癖がついていない。」
石川くん、最近は食事の時によくかんで食べるよう気をつけているそうです。
矯正学が専門の葛西一貴(かさい・かずたか)教授は、歯並びが悪くなることを予防するには、早い時期からの取り組みが重要だといいます。
日本大学 松戸歯学部 葛西一貴教授
「永久歯列に生えかわる小学生の時期が最も大事な時期になるので、口を閉じるとか正しくかむとか、基礎的な、根本的なところをきちんとすればいい歯並びになる。」
「口の開けっぱなし」 健康への影響も
口の筋力がなく開けっぱなしになると、歯並びだけでなく健康にも関わってきます。
内科医の今井一彰(いまい・かずあき)さんです。
内科医 今井一彰さん
「手を使わずに(口で吹いて)ぴゅーっと伸ばして。」
子どもの口の筋力がついているか確かめるときに使うのは、おもちゃ。
風船をうまく膨らませられない子どもなどは、口の周りの筋力が十分に使えていないそうです。
今井さんがこうした診察をしているのは、口を開けたままの口呼吸だと、病気になるリスクが高まるからです。
口の中の細菌は、唾液が殺菌・消毒をしています。
しかし口が開いていると、唾液が乾き、口の中の雑菌が増えてしまいます。
すると、歯周病の悪化を招いたり、免疫力が低下し風邪などにかかりやすくなります。
歯周病からリウマチなど、ほかの病気につながることもあります。
「口の筋力」鍛えて 健康も 歯並びも改善
そこで今井さんが、口の周りの筋力を鍛える方法として考案したのが、こちら。
その名も、「あいうべ体操」。
口を大きく「あ」「い」「う」「べ」と開くことで、ふだん動かさない筋肉をしっかり動かします。
1日30セットがめやすです。
この体操をすると舌にも筋力がつき、正しい位置に戻ってきます。
健康への効果にも、歯並びの改善にもつながるそうです。
内科医 今井一彰さん
「(口は)命の入り口であると同時に、病の入り口でもある。
私たち一人一人の心がけによって、どちらに変わるのか決まってくる。」
「あ~い~う~べ~。」
病気の予防として、あいうべ体操を取り入れる小学校も各地で増えています。
福岡市内のこの小学校では、毎朝あいうべ体操を行っています。
以前は、全校児童の半分がインフルエンザにかかったこともありましたが、最近はその数が減ってきたといいます。
福岡市立北崎小学校 養護教諭 塚元依子さん
「ここ2~3年は多くて2割、少なくて1割で(インフルエンザが)収まっている。
(体操の)効果が見えてきたかなと思う。」
歯と口の健康 “習慣”がカギ
阿部
「口を開けていると、口呼吸をしていると、それだけで歯並びや病気にも影響してくるというのは驚きですね。」
赤松
「そうなんですよね。
口が開いていて口の中の環境が悪くなる、するとリウマチだけではなくて、糖尿病や肺炎などさまざまな病気にもつながるとして、先月(5月)開かれた日本歯周病学会でも注目を集めていました。」
和久田
「『口は病の入り口』というお話もありましたが、普段から食事のしかたと呼吸のしかた、気を付けておいた方がいいんですね。」
赤松
「私も自分の子どもをちゃんと見ようと思いました。
子どもだけじゃありません、大人やお年寄りも、口を開けっぱなしにしていると、歯並びや病気、そしていびきなどにも影響があるそうですからご注意ください。」
阿部
「本当にちょっとした習慣とか癖とか、気を付けないといけませんね。」
赤松
「また、アレルギーなどによる鼻づまり、これも口呼吸の原因の一つです。
ですからその場合は、耳鼻咽喉科を受診してください。」
2015年6月4日 おはよう日本より