今注目の3Dプリンタ その驚くべき活用事例と今後の展望
近年、ものづくり業界において大きな注目を集めているのが3Dプリンタです。何が画期的かと言いますと、安価に一般市民でも購入できるようになったという点です。実は3Dプリンタの歴史は古く、1980年台には既に開発され実用化されていました。当時は価格が数千万円し、特殊な制御が必要でした。それが2000年代に入り、数百万円まで価格は下がりましたが、一部の企業にて採用されるに留まっています。それが2008年から2011年にかけて個人用向けの安価な3Dプリンタが販売されると、爆発的な成長をとげ、2013年には7万台が販売されるに至っています。「個人でもメーカーになれる」のフレーズで売り込みが行われ、アメリカや日本を始め、各国政府で関連技術への研究開発投資が盛んに行われていることも注目される状況を後押ししています。3Dプリンタの最大の特徴は、従来は造形物を作るためにかかる時間やお金などのコストを大きく削減できる点にあります。造形物を作るためには、従来は原型師に依頼をし、数十万円で作成したものをベースに数十万円の金型を制作し、ようやく成形することができました。そこまでの工程で約1ヶ月はかかってしまいます。それが、サンプル製品を1個作るに当たって1日~3日程度で完成させてしまうのが3Dプリンタの特徴です。1?あたり20円程度という価格もこれまでの造形から考えると破格です。データから直接造形を作ることが出来る点、金型が不要な点や複雑な形状が成形できるという点が3Dプリンタの良い面の特徴です。一方で、利用可能な材料の種類が限られたり、用途によっては耐熱性や強度、耐久性が不十分になってしまうという特徴もあります。さらに何千、何万ピースと大量生産を行う場合にはやはり金型を作っての成形の方が向いています。紹介したような3Dプリンタの特徴を踏まえると、3Dプリンタの活用においては大きく2つの方向性が考えられます。1つ目は設計から成形までを簡易化できることを活かして1点ものや小ロット品を制作することです。例えば、試作品や原型、補聴器・義肢などの福祉装具、矯正治療装置・入れ歯・クラウンなどの歯科用具、人工骨・手術支援モデルなどの医療用具、航空機部品などが挙げられます。2つ目は従来の加工法では造形が複雑で困難な形状の作成を行うことです。意匠性の高い服飾への応用や、複雑な造形が求められる医療系のサンプル作成などに活用されるでしょう。これらは既に実用化されているものも多くあり、先ほど紹介した医療分野の他に、建築、教育分野で特に普及しています。建築分野ではコンペやプレゼン用の建築模型として、教育分野ではもの作り教育ツールとして活用されています。3Dプリンタの驚くべき活用事例として、昨今ニュースを賑わせている拳銃をイメージする方もいらっしゃるかもしれませんが、これはもちろん犯罪なのでやってはいけない事例ですね。その他、驚くべき活用事例を紹介します。アメリカの大手菓子メーカーのハーシーは3Dプリンタを活用してチョコレートや砂糖などを原料として菓子作りを行っています。さらに、家庭用のフード3Dプリンタとして開発が進んでいます。将来、電子レンジの隣には3Dプリンタがあるという時代が来るかもしれません。さらに、自動車メーカーのホンダはこれまで発売されたコンセプトカーの3Dプリンタデータを特設ウェブサイトにて公開しています。このようなファンサービスも今後増えるかもしれません。3Dプリンタで作ったアイアンマンの電動スーツの販売が開始されたり、衣服を作る3Dプリンタも開発が進んでいます。既にファッションショーで登場したものもあります。3Dプリンタで臓器を形にして移植できるようにしたり、はたまた音楽を形にしたり、月面基地を月の砂で作る技術の開発など、3Dプリンタの技術の応用は次々と進んでいます。将来、3Dプリンタの技術はもっと多岐に渡って私たちの生活の身近なところへ広がっていくのかもしれません。アメリカのウォーラーズ・アソシエイツ社の調査によれば、材料やサービスなど関連世界市場は2012年に22億ドルに達しています。1990年以降安定して伸びてきた3Dプリンタ市場ですが、2010年以降の伸び率が大きく、2012年までで年率27%に達しています。今のところ、3Dプリンタの製造や装置の導入が最も進んでいるのがアメリカで、3Dプリンタの応用に関しても最も先進的な活用を見せています。今後最も活用が期待される業界として医療業界が挙げられるでしょう。医療分野での3Dプリンタの応用が広がれば、建築や教育、衣服、食などにも応用が利く技術が増えてくるはずです。3Dプリンタは増々私たちの生活に欠かせない技術になっていくのではないでしょうか。
2014年9月17日 経営者online より